はじめに
ごいたでは、しは全部で10枚あります。 ほかの駒と比べて枚数が多いため、 普通に1枚だけ出しても相手に受けられやすい駒です。
しかし、自分や味方がしを多く持っていることが分かれば、 相手側に残っているしは少なくなります。 そこで、複数のしを続けて出して攻めるのが、 このページで扱う「し攻め」です。
し攻めでは、 自分の初期し枚数だけでなく、 味方がしにどう反応したか、 相手がしを受けたか・パスしたかを見ることも重要です。
ここでは、現在の実戦上の基本方針として、 4し・3しを中心に整理します。
し攻めを選ぶ位置づけ
し攻めは基本的に、 ほかに明確な強い攻めがないときに検討する戦略です。
攻めの定石で見ると、 王玉、3香、香以外の中駒3枚、大駒2枚のような 強い攻めがある場合は、そちらを優先します。 主に、手駒の中で使える攻めが 2香以下の強さしかないときに、 し攻めが選択肢として浮上してきます。
攻めの定石
ごいたの攻めには、代表的な型があります。 ここでは、攻めの強さを大まかに次のように整理します。 攻めの定石の強さは、上から順番になっています。
| 攻めの型 | 攻めの強さの目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 王玉 | とても強い | 条件が整うと、そのまま上がりに近づく |
| 3香 | とても強い | 香は 王や玉で受けられない |
| 香以外の中駒3枚 | かなり強い | 同じ駒を連続して出す |
| 大駒2枚 | かなり強い | 相手に王や玉を 使わせやすい |
| 2香 | 状況次第 | 強いが、3香ほど確実ではない |
| 香以外の中駒2枚 | 状況次第 | 普通の攻めとして使いやすい |
| 3し | 弱いが戦略になる | し攻めを考える材料になる |
| 4し | 弱いが戦略になる | 味方の反応を見ながら進める |
このため、し攻めは 「4し・3しだから最優先で行う」のではなく、 自分の手駒に、より強い攻めがあるかどうかを確認したうえで選ぶ ことが基本になります。
自分の初期し枚数による基本方針
| 初期枚数 | 現在の基本方針 |
|---|---|
| 4し | 親なら、しを1枚伏せ、 攻め①・②・③をしにすることを基本とする |
| 3し | 手駒が弱く、 ほかに強い連続攻めがない場合に し攻めを検討する |
| 2し | 通常は積極的なし攻めにはしない。 味方への誤った合図にならないよう慎重に扱う |
| 1し | 受け駒として残す傾向が非常に強い。 基本的には伏せたり、 序盤の攻めに使ったりしない |
ただし、これは固定されたルールではありません。 確定上がり、高得点の上がり、 相手の即上がりを止める必要がある場面などでは、 その局面を優先します。
4しの場合
親で4しを持っている場合は、 まず次の形を基本に考えます。
4枚あるしのうち1枚を最初に伏せ、 残り3枚を攻め①・攻め②・攻め③に使う考え方です。
ただし、途中で確定上がりが見えた場合や、 より高い点数で上がれる場合、 相手の即上がりを止める必要が出た場合は、 し攻めを最後まで続ける必要はありません。
その時点の局面を見て、 し攻めを続けるか、 別の攻めに切り替えるかを判断します。
Turn Flow
4しの基本的なし攻め
Aは親で「しししし香馬銀金」という手駒です。しを1枚伏せ、残り3枚のしを攻め①・②・③に使う基本形を見ます。
4しの基本的なし攻め
3しの場合
3しだからといって、 必ずし攻めをするわけではありません。
現在は、主に次の条件を見ています。
- 王・玉などがあり、受けが比較的広い
- 銀3枚など、 もっと明確な連続攻めがない
- まだ局面の序盤である、 またはし攻めをする余裕がある
また、大駒を受けた直後に3し以上残っていて、 ほかの駒が単発の金・銀・馬などであれば、 単発駒よりし攻めを優先することがあります。
一方、たとえば 「親・3し・飛・角・王」のように 別の明確な攻め順がある場合は、 し攻めより飛・角などを使うことがあります。
つまり3しは、 し攻めを検討できる枚数ではありますが、 4しほど自動的にし攻めを選ぶわけではありません。
味方のし攻めへの反応
味方がしを出した場合は、 自分の初期し枚数によって対応を変えます。
4しを持っている場合
味方のしを 「しで受けて、しを返す」 という動きをすることがあります。
これは、 「自分もしを多く持っているので、 し攻めを続けてもよい」 という合図として使います。
ただし、自分のし攻めに必要なしまで 使ってしまう場合は、この返し方をしません。 自分の攻め②・攻め③にしを残す必要があるなら、 味方のしを受けず、3つ目のしを残します。
Turn Flow
味方がし攻めに賛同する例
AとCが味方、BとDが相手です。Aがしで攻めたとき、4しのCが「しで受けて、しを返す」ことで、し攻めへの賛同を伝えます。
味方がし攻めに賛同する例
3しの場合
原則として、味方のしにはパスします。
初期3しの段階で「し受け・し返し」をすると、 味方に4しを持っていると 誤解させる可能性があるためです。
ただし、すでに攻め①を終えており、 手駒が残り6枚、そのうち3枚がし という場合は、 しで受けて、しを返すことがあります。
この場合、 しで受ける → しを返す と2枚のしを使っても、 手元にはまだ1枚のしが残ります。 そのため、後の攻め③でもしを使うことができます。
つまり、初期3しの状態とは違い、 すでに攻め①を終えていることで、 残り3しを次の3つの用途に使える状態になっています。
- 味方のしを受ける
- しを返す
- 攻め③にしを使う
この「し受け・し返し」を見た味方は、 こちらが3し、あるいは4し程度のしを持っている 可能性が高いと考え、 し攻めを続ける判断材料にできます。
したがって3しの場合でも、 現在の手駒枚数と、あと何回攻める必要があるか によっては、 し受け・し返しを行ってよい場合があります。
Turn Flow
3しでも、し受け・し返しができる例
AとCが味方です。Aはすでに攻め①を終えており、手駒は残り6枚。そのうち3枚がしです。この状態なら、味方のしを受けてしを返しても、攻め③用のしを1枚残せます。
3しでも、し受け・し返しができる例
初期1〜2しの場合
しで受ける場合は、 しを返すのではなく、 し以外の強い駒で攻めます。
これによって、 「しは持っているが、 し攻めを続けられるほど多くはない」 という情報を味方に伝えます。
一度、賛同を伝えた後
一度、 「しで受ける → しを返す」 という動きでし攻めへの賛同を伝えた場合、 次の味方のしは原則としてパスします。
同じ合図を何度も繰り返すと、 必要以上にしを消費してしまうためです。
しの配分の確率
しは全部で10枚あり、 4人に8枚ずつ手駒が配られます。
ここでは、 5し以上の人がいる配りを除き、 4人全員が4し以下だった場合 に限定して、し10枚の配分を見ます。
| 順位 | しの配分 | 確率 |
|---|---|---|
| 1 | 4・3・2・1 | 39.20% |
| 2 | 3・3・2・2 | 27.44% |
| 3 | 4・2・2・2 | 11.43% |
| 4 | 3・3・3・1 | 10.45% |
| 5 | 4・3・3・0 | 4.90% |
| 6 | 4・4・1・1 | 3.50% |
| 7 | 4・4・2・0 | 3.06% |
最も多いのは 4・3・2・1で39.20%です。 次に3・3・2・2が27.44%となります。
上位4パターンの 4・3・2・1、3・3・2・2、 4・2・2・2、3・3・3・1だけで、 約88.5%を占めます。
Aが4しだと分かっている場合
ここから一歩進めて、 自分Aが4しだと分かっている場合を考えます。 残りのしは6枚です。
B・C・Dも4し以下という条件では、 残り6枚の分かれ方は次のようになります。
| B・C・D全体の配分 | 確率 |
|---|---|
| 3・2・1 | 57.09% |
| 2・2・2 | 16.65% |
| 4・1・1 | 10.20% |
| 4・2・0 | 8.92% |
| 3・3・0 | 7.14% |
この場合、 残り3人が3・2・1に分かれる確率は 57.09%で、 最も高くなります。
ただし、ここでも 「誰が3しで、誰が2しで、誰が1しか」 までは、この57.09%だけでは分かりません。 そこで実際の対局中の動きを組み合わせて考えます。
配分と動きから全体を読む
たとえば、 AとCが味方、BとDが相手だとします。
- Aは初期4しで、最初の攻めにしを出した
- Bはしをパスした
- 味方のCもしをパスした
- Dはしで受けて、銀で攻めた
Turn Flow
配分と動きから、しの位置を読む例
AとCが味方、BとDが相手です。Aは初期4し。Aのし攻めに対するB・C・Dの反応と、しの配分確率を組み合わせて考えます。手駒は、4し、香、馬、金、角です。
配分と動きから、しの位置を読む例
このとき、たとえば次のような配分が候補になります。
| 候補 | A | B | C | D | 全体の型 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① | 4し | 1し | 3し | 2し | 4・3・2・1 |
| ② | 4し | 0し | 3し | 3し | 4・3・3・0 |
| ③ | 4し | 3し | 0し | 3し | 4・3・3・0 |
| ④ | 4し | 2し | 0し | 4し | 4・4・2・0 |
まず配札だけを見ると、 Aが4しであることが分かっている場合、 残りの3人が3・2・1に分かれる形が 57.09%で最も多くなります。
さらに実際の動きを見ます。 Bはしをパスし、Cもパス、 Dはしで受けたあと銀を出しています。
先ほどの基本方針に照らすと、 Bが1し、Cが3し、Dが2し というパターン①は、 配分の出やすさと3人の動きの両方から見て、 有力な候補として考えることができます。
ただし、 パターン①だと確定するわけではありません。 2・2・2や4・1・1など、 ここに挙げていない配分もあり得ます。 また、プレイヤーが必ず基本方針どおりに 動くとも限りません。
そのため、しの配分確率は 「答えを決める数字」ではなく、 相手と味方の行動から、 どの配分がありそうかを考えるための基準 として使います。
このように、 しに対する受け・パス・返し方と、 しの配分確率を組み合わせることで、 全体のしの持ち方をある程度予測できます。
まとめ
し攻めは、 しを多く持っているだけで成立する戦略ではありません。
重要なのは、次の3つです。
- 自分の初期し枚数から、 し攻めをするか判断する
- 味方のし受け・し返し・パスから、 味方のし枚数を読む
- しの配分確率と実際の行動を組み合わせて、 全体のし配分を推測する
特に4しは、 親からし攻めを始める明確な材料になります。 一方で3しは、 ほかの手駒や局面を見ながら し攻めを選ぶか判断する必要があります。
また、確率だけでしの位置を決めつけず、 実際の受け方やパスの情報を重ねて読むことが大切です。
参考: 能登ごいた保存会|公式ルール
し攻めの評価や戦略は、 執筆者1222の実戦経験をもとに整理しています。
しの配分確率は、 32枚を4人に8枚ずつ配ることを前提に、 10枚の「し」の組み合わせから計算しています。 本文中の配分表は、 4人全員が4し以下である場合に限定した条件付き確率です。